突発性正常圧水頭症(iNPH)

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年をとった祖父や祖母が

ここのところなんだか歩きにくくなった…
今までよりも認知症状がひどくなってきた…

などの症状があらわれてきていても、「もう年だから致し方ない、年だからもう治らない」とあきらめてしまっている方が多いのではありませんか。

高齢になると筋力も落ちてきますし、足もとがふらついたり、歩くこと自体がうまくできなかったりということが起きやすくなります。これらの症状は、加齢によるものももちろんありますが、はっきりした理由がないにもかかわらず、うまく歩けなくなってきて、認知症や尿失禁といった症状が出てくる場合があります。

そのような時は、突発性正常圧水頭症(iNPH)の可能性があります。
突発性正常圧水頭症(iNPH)…あまり聞いたことのない病名かもしれませんが、最近になってテレビの医療番組やニュースの健康コーナーなどでたまに耳にすることも多くなってきたような気がします。

この突発性正常圧水頭症(iNPH)は、高齢だからと言ってあきらめることなく、適切な診断と治療を施すことにより、歩行障害や認知症状を改善することができる病気です。その結果として、介護の負担軽減や患者自身のQOL(クォリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上が可能となります。

突発性正常圧水頭症(iNPH)の症状

突発性正常圧水頭症(iNPH)の主な症状は、歩行障害・認知症・尿失禁で、この症状を「三兆候」と呼んでいます。

歩行障害

歩行障害

突発性正常圧水頭症(iNPH)の初期症状としてあらわれることが多いのが歩行障害です。三徴候のうち最も改善の得られる症状です。症状としては、歩行が不安定になります。足が上げづらく、すり足になったり、歩幅も小刻みになります。足を広げて歩くようになることもあります。障害が強くなると、第一歩が出ずに歩き始められなくなったり、起立の状態を保つことができなくなります。

認知症

認知症状

自発性がなくなり、思考や行動面での緩慢さが目立つようになります。物事への興味や集中力をなくし、ぼんやりした状態になります。また、表情の変化も乏しくなります。最近の記憶に対する障害が現れることがありますが、物忘れが軽度な場合ほど治療効果に期待が持てます。


尿失禁

尿失禁

トイレが非常に近くなったり、我慢できる時間が短くなったりします。歩行障害もあるために間に合わなくて失禁してしまうこともあります。前頭葉の障害によるものでは、無関心さからくる失禁となります。


突発性正常圧水頭症(iNPH)の診断

まず、三兆候のうちひとつでも当てはまる症状が現れた場合、そしてその原因がわからない場合は、ご家族やご本人が「突発性正常圧水頭症(iNPH)」ではないかと疑ってみて下さい。

特に、
  • 認知症状が比較的短時間で出現してきた。
  • 歩行障害が短時間でひどくなった。

等の現象が現れた場合は、ためらわずに脳神経外科・神経内科を受診することをおすすめします。これらの症状は急速に悪くなったり、ゆっくり進行したりしますが、見逃さずに専門医の意見を聴いて早期診断・早期治療をすることが重要です。
専門医では以下のような方法で判断してくれます。

問診

症状の診断は、主に脳神経外科や神経内科または精神科の外来にて行われます。
担当の医師が、患者の歩く様子を注意深く観察したり、同伴のご家族から生活状況の話をうかがったりして、突発性正常圧水頭症(iNPH)の三徴候である、歩行障害・認知症・尿失禁をとらえます。そして歩行障害の程度を測定したり、認知症の有無・程度を調べる検査を行い、尿失禁については本人あるいは同伴者に問診で確認します。

画像診断

外来での臨床症状の確認で突発性正常圧水頭症(iNPH)やその他の病気の可能性を確認した後はCTスキャンやMRIといった断層画像診断に進みます。
画像診断は外来にて確認された臨床症状の原因をつきとめる検査です。CTスキャンやMRIなどの断層画像診断装置で、頭の内部で起こっている病態を詳細に把握することができます。
画像検査は、通常30分前後で終わりますし、患者さんも検査による苦痛を感じることはありません。
突発性正常圧水頭症(iNPH)の患者さんでは、脳室の拡大が一目瞭然です。
画像診断により、脳室の拡大が認められ、突発性正常圧水頭症(iNPH)が疑われる場合には、さらに診断の精度を上げるために髄液循環障害の検査を行います。

髄液循環障害検査

髄液循環障害の検査には、外来の診療室でできる安全で比較的簡便な検査方法として、腰椎(腰骨)の間から過剰にたまっている脳脊髄液を少量排除して症状の改善具合を観察する髄液排除試験(髄液タップテスト)が行われています。
この検査前の症状の程度と比べて、検査後の患者の症状に改善が見られれば、手術(髄液シャント術)が有効であることが予想できることになります。
その他にも数日間髄液を排除(持続髄液ドレナージ)したり、髄液圧を測ったり、髄液流出抵抗測定(インフュージョンテスト)を行うことによって髄液シャント術の適応をさらに高い精度で調べることもあります。

突発性正常圧水頭症(iNPH)の治療

髄液シャント術

特発性正常圧水頭症(iNPH)は、髄液の流れを良くする治療によって症状が改善します。この手術を髄液シャント術といいます。

髄液シャント術には主に3つの方法があります。

  • 脳室-腹腔シャント術(V-Pシャント)
  • 脳室-心房シャント術(V-Aシャント)
  • 腰椎-腹腔シャント術(L-Pシャント)

髄液シャント術を行うことで、過剰にたまってしまった脳脊髄液を他の体腔へ流すことができるようになり、阻害されていた脳の機能を回復させることができ、歩行障害や認知症症状、尿失禁といったiNPHの症状を改善することができます。

最近の特発性正常圧水頭症(iNPH)治療では、様々な研究により、腰椎-腹腔シャント術(L-Pシャント)の有効性と安全性が検証され主流になりつつあります。さらに、より患者に負担の少ない手術法や、髄液の過剰排除防止デバイスの開発など、シャントシステムならびにL-Pシャントでの治療は格段に進歩しています。

突発性正常圧水頭症(iNPH)に気づくために…

特発性正常圧水頭症(iNPH)は、現在のところ6万人~8万人の患者がいるのではと推定されています。この病気が高齢者に多いという現状から推測すると、高齢化の進む日本では患者数は今後急速に増えていくことが予測されます。
突発性正常圧水頭症は、医療機関での認知度補低いのが現状のようで、検査を行っても正常あるいは脳萎縮と診断されてしまうケースが多く、見逃されているケースが非常に多いようです。年を取って転びやすくなった等の症状に気づいた場合は面倒でも是非専門医にご相談ください。

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Filed under: 認知症の原因疾患 — admin 4:47 PM