多発性硬化症

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脳や脊髄の神経細胞にある軸索(じくさく)と呼ばれる突起が他の神経細胞とつながることで、細胞と細胞間の情報伝達が行われています。軸索には髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる軸索を包むサヤのようなものがあり、突起を保護 したり、電気的な情報の伝達をスムーズに行うような働きをしています。この髄鞘が炎症により壊されると、神経細胞の情報伝達がうまくいかず、麻痺やしびれをきたします。多発性硬化症は、脳や脊髄などの中枢神経に、この脱髄をきたす疾患です。炎症により、脱髄が生じる詳しいメカニズムはまだわかっていませんが、免疫の異常ではないかと考えられているようです。
日本での多発性硬化症の患者数は、人口10万人当たり3~5人ほどで、どちらかというと女性に多くみられます。患者の約80パーセントが15~50歳で発症すると言われています。

多発性硬化症の原因

多発性硬化症の原因でしが、今のところハッキリとしたことはわかっていません。現在のところ有力なのは「遺伝」「自己免疫」「ウイルス感染」の3つです。

遺伝

多発性硬化症の原因として遺伝があげられるのは、アジア・アフリカ系と欧米系を比較すると、その罹患率が大きく異なっているためです。罹患率の低い地域から高い地域に移住した人や、罹患率の高い地域に住んでいる先住民の罹患率が低いことなども遺伝説の重要な支持要因となっています。

自己免疫

私たちの体は、白血球やリンパ球などの免疫系で、外部からの細菌やウイルスの攻撃から体を守っているのですが、この免疫系が自分の脳や脊髄を攻撃するようになるのが自己免疫疾患です。なぜこうなるのかはまだハッキリとはわかっていませんが、遺伝的になりやすさを決定する因子が関与しているのではないか、また白血球やリンパ球などの免疫担当細胞がウイルスのような病原体と戦ううちに間違えて自分の脳を攻撃するようになるのではないかと考えられています。

ウイルス感染

多発性硬化症の病態経過が再発と寛解を繰り返すことから、ウイルス感染が疑われているのです。しかし、この説も現状では決定的な証拠は見つかっていないようです。

多発性硬化症の症状

多発性硬化症は、体のあらゆる部分の神経が冒される病気なので、発症部位によりその症状も実に様々なのですが、よく見られる症状は以下のようなものです。

  • 運動麻痺
  • 感覚障害
  • 深部反射亢進
  • 視力障害
  • 視野障害
  • 病的反射
  • 括約筋障害
  • 視神経萎縮
  • 失調症
  • 企図振戦
  • 眼筋麻痺
  • 嚥下困難
  • 疲労

多発性硬化症の診断

脳脊髄液検査

多発性硬化症に罹患した場合、総蛋白量と白血球数の増加、免疫グロブリン(IgG)の増加、乏クローン帯(Oligoclonal bands)の出現(約60%に見られます。)が見いだされます。これらの異変は、多発性硬化症のみならず、中枢神経系の炎症疾患では共通にみられる変化ですが、多発性硬化症の診断をより確かにするとともに、病気の活動性の指標として利用されることがあります。

MRI

磁気共鳴画像診断装置による検査は、多発硬化症を診断する上で有力な手段となり得る方法で、無症状の病巣も検出することができます。さらに、造影剤を利用したMRI検査では、より小さな病巣まで確認でき、また活動的な病巣かどうかの判断にも役立ちます。

多発性硬化症の治療法

副腎ステロイドホルモン

多発性硬化症の急性悪化時にはメチルプレドニゾロンの大量投与(500~1,000mgを3~5日間)が行われます。とくに視神経炎や脊髄炎で症状が重い時は試みられるべき治療法です。その後、経口のプレドニゾロンを初期には60~80mg投与され、症状に応じて徐々に減量されます。ステロイドの投与期間は約2週間が目安となっています。もちろん症状が再発する時はこの期間が長くなることもあります。

インターフェロン

インターフェロンβ-1bを2日おきに5年間にわたって皮下注射をしたところ、3分の1で再発の頻度と重症度が軽減したという報告があります。多発性硬化症のの自然経過によい影響を与える薬として期待されています。

コポリマー1

多発性硬化症は髄鞘タンパクであるMBPに対する自己免疫疾患ではないかと推測されていますが、このMBPの働きをまねて合成されたものがコポリマー1です。これの皮下注射が、インターフェロンβが無効の症例に有効ではないかと考えられています。

免疫抑制剤

慢性進行性の症例に対して、プレドニゾロンと免疫抑制剤のシクロフォスファミド併用療法を行ったところ、2年間の経過で進行を遅らせることができたとの報告があります。しかし副作用が強いので慎重な投与が要求されます。

生活上の注意点

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多発性硬化症の急性悪化期には安静が必要です。その後の回復期にはリハビリテーションが行われます。安静が必要な時に気をつけなければならないことは、関節の拘縮と褥瘡(床ずれ)です。さらに、風邪をひいたり外傷を負ったりすると、感染症により多発性硬化症の引き金になることがあるようですので、注意する必要があります。

Filed under: 認知症の原因疾患 — admin 3:02 PM